『亜美さんへ
お久しぶりです。浦和です。
今度そちらに行くことになりました
つきましては一度お会いできたら…と思っております。』

良くんから手紙が届いた
前にアドレスを教えたのだから
メールで送ってくればいいものを…
良くんらしいと言えば良くんらしいけど

私は早速電話を掛けた

「はい、浦和です」

「もしもし良くん？」

「…！亜美さん！どうしたんですか」

「手紙が届いたから電話してみたの」

「えっ、じゃあ会っていただけますか？」

「ええ、何処にしましょうか？」

「では…」





私は１人で水族館へ来ていた

本当は亜美さんを誘ったのだが
用事があるといわれて断られた

仕方がないので下見を兼ねて１人で来た

あまり人気のない小水槽コーナーの前
あまり人がいないというより
全く人がいない

ぼーっと水槽を眺めていた時だった

どこからか聞こえる
聞き覚えのある声
聞き間違いなんてするはずがない
どうしてあなたがここに？


声のする方へ振り向いた
声の主はやはり亜美さんだった

隣の男は誰なのだろう？

亜美さんに限って…
いや、考えないようにしよう

様々なことを考え
見なかったことにしようと思った

でも…無理だった




「亜美…さん？」

声に振り向くと大気さんがいた
そういえば今日
大気さんに誘われていたのだっけ

「偶然ですね、どなたかご一緒なのですか？」

「いいえ、１人ですよ。そちらの方は？」

「中学のときからの友人で…」

「浦和です。
スリーライツの大気光さんですよね？
TVで拝見しています」

「そうですか。ありがとう」

大気さんはニコリともしないで言った

何というか…不機嫌？

私何かしたかしら…？





気付いた
このスリーライツの大気
という人は亜美さんが好きだ

亜美さんもこの人のことが好きだ

あれ…？
俺さりげなくふられてないか？

ちらっと横目で２人を見た

何というか
俺といるときと違う雰囲気

まるで俺を邪魔だと言うかのような…

あ、大気という人がこっちを見た

な、何なんだ
その勝ち誇った顔は！

意味もなく虚しくなったので
大人しく帰ろうと思った



「亜美さん」

「どうかしたの？良君」

「あのっ…よ、用事を思い出したので帰りますね」

「えっ？でも…」

「用事なら仕方がないですよ」

ね？と言いながら俺を見る
その目は明らかに
『さっさと帰れ』という目だった

「えっ…と、あ、はい」

亜美さんもそう…と納得していた

「じゃあこれで」

「ええ、また会えるといいわね」

最高の笑顔で返してくれる亜美さん

「ええ、そうですね」

俺も精一杯の笑顔で返す
でも…






多分あの人(大気)がいる限り
会えないかもしれません…


その後こっそりと泣いたのは秘密です